温泉を楽しむための基礎知識
そもそも温泉とはどんなものでしょう。お湯が湧き出しているものが温泉? もちろんこれは間違ってはいません。ですが温泉の全てが、お湯というわけでもないのです。
日本における温泉は、温泉法という法律でその定義が定められています。もちろんこの温泉法は、温泉の定義づけだけでなく、利用者の安全や、温泉そのものを保護することを目的にしています。温泉法による温泉の定義は、水温が25℃以上あること、これが第一条件です。温水プールより冷たい温度であっても構わない事になります。もちろん温度の低い温泉を入浴用に使うには、ほとんどの場合加熱して使われます。それから温泉法で定められた成分を、一つ以上、そして規定量以上含むことが温泉の定義です。その成分は以下の通りです。
●ガスを除く溶存物質
●遊離炭酸
●リチウムイオン
●ストロンチウムイオン
●バリウムイオン
●フェロ又はフェリイオン
●第一マンガンイオン
●水素イオン
●臭素イオン
●沃素イオン
●フッ素イオン、
●ヒ酸水素イオン
●メタ亜ひ酸
●総硫黄
●メタホウ酸
●メタけい酸
●重炭酸ソーダ
●ラドン
●ラジウム塩
また、温泉法とは別に、環境省も温泉の分類を定めています。鉱泉の温度による分類では、25℃未満を冷鉱泉、25℃以上34℃未満を低温泉、34℃以上42℃未満を温泉、42℃以上を高温泉と定めています。温泉法で定められた温泉に対して、環境省が定める温泉の定義の方が狭いため、温泉のイメージに近いのは環境省のほうの分類になります。もちろん温泉法をクリアしていれば温泉を名乗ることができるため、井戸水として使用していた場所が、成分検査で温泉と名乗れることになったような場所もあります。温度が低いので沸かし湯となりますが、法的には問題はありません。温泉法に従えば、かなりの広範囲で温泉が出ていることになるのです。もちろん成分的には温泉と同じ水質であって、温度が低い場合は、温泉を名乗らずに冷泉と呼び、冷たいまま利用している場所もあります。
温泉に何らかの効果効用を期待していく場合もありますよね。そんな場合は環境省が別途定める「国民保養温泉地」、「国民保健温泉地」として指定されている温泉地を見てみるのもありです。保養目的とした場合の効果が期待できる、そして安全でお湯の温度も入浴に適したもの、周辺環境が良い事など、細かな決まりがあって指定されているものです。お肌にいい温泉、神経痛に効く温泉など、目的となる効能がはっきりしているものが多いので、こちらも温泉選びの参考にするといいですね。
例えば、単純温泉は最もポピュラーな温泉です。クセのない温泉で、肌に刺激の少ないのが特徴です。その中でpH8.5以上煮物をアルカリ性単純温泉と呼び、温泉成分表の一番上には、水素イオン濃度が表示されています。アルカリ性の温泉はぬめりがあり、美人湯として知られています。人の肌は通常酸性ですが、なぜアルカリがいいのかというと、アルカリは石けんと同じで油脂を溶かす働きがあります。ですからアルカリ性の温泉にはいると、皮膚の表面についていた余分な皮脂を自然に落としてくれるのです。結果、お肌の新陳代謝が活発になり、美肌になれるというわけです。ただしpHが高すぎると逆に乾燥しやすくなりますから注意して下さいね。
また、含鉄泉というのは、見れば分かる通り、鉄イオンが含まれる温泉です。空気に触れて酸化すると赤みがかった色になります。別府温泉の血の池地獄はこの含鉄泉で、酸化した成分が血のように見えるのです。こちらは貧血などに有効だといわれています。温泉は、そのお湯の質によって、適応症が表示されています。この適応症を持つ人にとって、そのお湯は効能が期待できる事になります。
ですが温泉には適応症と同時に、禁忌症があります。温泉は体にいい、健康にいいものというイメージですが、健康になれるとは限らないのです。禁忌症というのは、この症状の人はこの温泉での入浴は禁じるという意味です。温泉旅館でお客様に入浴しないで下さいとは言いません。利用するほうが気にしなくてはいけない事なのです。もちろん入浴だけでなく、飲泉も同様に禁忌症があります。最近は、どの温泉旅館やホテルも、ホームページを作って予約を受け付けるようになりました。それなのにほとんどは効能、つまりは適応症だけを載せていて、禁忌症には全く触れていないところがほとんどです。泉質が表示されていれば自分で調べることもできますが、もちろんこれもネットでは調べられないところが多くなっています。
最も多い、一般禁忌症とされるものは、急性疾患(特に熱がある時)、活動性の結核、悪性腫瘍、重い心臓病、呼吸不全、腎不全、出血性の疾患、高度の貧血、その他一般に病勢進行中の疾患、妊娠中(特に妊娠初期と末期)とされています。その他に泉質別に禁忌症があります。健康であれば気にする必要のないものがほとんどですが、何か気になることがあれば、しっかりと泉質を調べていってください。
温泉がどんなものなのか、ちょっとは分かっていただけたでしょうか。それでは今度は、温泉を楽しむために知っておきたいことを紹介していきます。